先日、言語脳科学の酒井邦嘉先生が、各方面の芸術家と対談している本「芸術を創る脳」を読み終えました。その中で、日本画家の千住博氏との対談を通して酒井氏が述べている「芸術は人間だけが持つ能力です。その意味でも、芸術は人間と等価だと言えるでしょう。」と言う箇所が特に心に残りました。もしかすると、2018年のパラダイスエアで来日した二人のアーティストと多少とはいえ関わらせて頂いたことで、この言葉の意味が少しでも伝わってきたのかもしれません。
アリシア・ロガルスカの作品は、介護を必要とする小野寺キヨ子さんのビデオ作品が印象的でした。そして、小野寺さんを普段、介護している武田有史氏が最終報告会で語ってくれた言葉が、アリシアの活動を物語っていると思います。残念ながら正確に記憶していませんが、こんな趣旨だったと思います。「要介護者の取材の場合、要介護者を憐れみの対象として映し出そうとするが、アリシアは、そうではなく、対象をそのまま映してくれそうな気がした。それがインタビューを受けている中で感じた。」とのことでした。我々は、人間として生きながら、他人には見せたいところだけを見せていると思います。見せたくない人間としての面も表現していくのがアート作品なのかもしれないと思いました。
黒人でクイアのジュピター・ブラウンのパフォーマンスからは、彼が街や人と関わることから生まれる葛藤のようなものを感じました。彼も、自らの身体を使って人間そのものを表現していたように思います。
パラダイスエアに滞在するアーティストの制作活動とは、松戸の街や人がどう認知されているのかを、そこに住む人が見たくないものも含めて表現してくれているものだと思います。それを政策提言であると真摯に受け止めることが、パラダイスエアを支援する我々の責務のように思います。